コレステロール値

かかりつけ薬剤師である僕は、顧客から以下の様な質問をうけました。

「今日の診察で勇気をだし、わたし先生に質問してみたの。コレステロール値の細かい計算方法も示し、この薬(アドルバスタチン10mg)を飲み続けなきゃいけないの?って。そうしたら、先生こう言われたのよ。『僕も実のところ良く分からないんだよね。それでは、これ服用中止しておきましょうか。』って。よっちゃん(末田のこと)、処方の根拠って無いの?そんな感じで薬をよろこんで飲み続ける人も居るんかねぇ。」

1950年生まれの京都大学医学部卒業、財団法人高雄病院理事長である江部康二さんの言葉(糖質制限食)が、スッカラカンの坊主頭を過りました。

「スタチン剤(高脂血症治療薬)で糖尿病リスク上昇というのは、もはや常識レベルになってきています。例えば、「今日の治療薬」(南江堂)という、とてもポピュラーな毎年出る薬の本がありますが、2014年版の368ページに「大規模臨床試験のメタアナリシスから、スタチンにより、糖尿病の新規発症がプラセボに比較して9%有意に上昇することが示された。また大規模な観察研究であるWHIでも、スタチン使用群で糖尿病の新規発症が多いことが示された」と記載してあります。スタチンというコレステロールを下げる薬には、横紋筋融解症、ミオパチー(筋肉痛)、肝障害などの副作用があることはよく知られていますが、糖尿病の新規発症にもしっかり留意する必要があるようです。今回のJAMA(2015; 313: 1029-1036)の論文では、スタチン使用の有無にかかわらず、コレステロールの下降そのものが血糖の上昇と関連していることが示唆されました。家族制高コレステロール血症の患者では、細胞内へのコレステロールの取り込みが低下しています。・・・中略・・・論文の著者らは、・・・中略・・・β細胞内にコレステロールが貯留することがβ細胞を障害させると考えています。スタチンによる耐糖能の悪化は起こるべくして起こる主作用なのですね。」

コレステロールを下げるべきか否かにおいて、「日本動脈硬化学会」と「日本脂質栄養学会」のバトルが続いています。
僕自身は、「家族性の特殊例を除いては、高コレステロール血症にスタチンは不必要」という、日本脂質栄養学会の見解を支持しています。多剤併用の問題(ポリファーマシー)もあります。もっと言えば、飲まない薬の副作用はありませんから。

なんだか時代は、変りつつあるなぁ。

11252594_1006983622653290_1612276632681122243_n

そんなことを考えた午後でした。

PAGETOP